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 プロローグ

「んんっ、はぅ」

 何かを堪えるような柔らかな声が俺の耳に聞こえてきた。
 それはどんどん大きくなってくる。
「ちょっ……ゃぁ……ん……んっ」
 声にならない声が聞こえた。
 学校をサボって電車乗ってライブの帰りの俺はとんでもないものを見た。
 スパッツをはいた美少女の尻を触る中年男。
 少女は顔を真っ赤にして耐えている。
 それでも口からは喘ぎ声が漏れている。
 柔らかな小尻に食い込んだ指先が更にその先に伸びようとしていた。
 黒いスパッツの生地に厭らしい太い指先が進んでいく。
 ぐにぐにと揉みしだく音がここまで聞こえてきそうだった。
 否、俺には確かに聞こえているのだ。あのスパッツ少女の心の悲鳴が!
 えーと、あれだ、この場合やるべき行動は一つしかない。俺はぐっと手を握りこむ。
 スパッツ好き男としていっちょ目の前のスパッツ美少女を汚す男を手に持ったエレキギターでぶっ飛ばした。
 ガインッという音が電車内に鳴り響いた。






 エグチミツコの奇妙な恋愛/第一部Kill Or Love?








 (1)

 朝起きると、目の前に尻があった。
 ぶっちゃけ、良い尻である。生尻である。キューティーヒップとでも言うべきか。
 それの描き出すラインは朝日の中で輝かしく俺の瞳に飛び込んできた。
 やべえ、勃ちそうだ。堪らない。っていうかこの尻、誰よ。
 その尻の主が俺の股間を掴みながら言った。痛いよ。
 あ、でも気持ち、いいか・も! アイタタタタタ。
 尻の主が俺の股間側から静かな低い声で呟いた。
「……萌えたか?」
 一気に萎えた。
「萌えねえよッ!」
 オレは即答した。

 朝っぱらから俺のベッドに忍び込んでいた(不法侵入)全裸の女(猥褻物陳列罪)は江口ミツコというクラスメートである。それ以上でもそれ以下でもない。ただクラスの委員長で真面目、というよりロボットみたいな女だというだけだ。
 ちなみにこいつの名前を漢字で書くと「江口満子」である。
 通称エロマンコ、それは俺の仲間内での呼び名である。れっつ卑猥。
 ここ数日この女はわけが分からないことばかりを毎朝俺にしてきやがる。
 一日目は普通の格好―――学校の制服姿で俺をして朝起こしにきた。(睡眠妨害)それも口に我が家のパンをくわえて(窃盗、無銭飲食)。ワケが分からん。
 二日目はベッドに潜り込んでいた。パジャマで。何故だ。
 三日目は体操服で俺のベッドの上で体操をしていた。嫌がらせか? 
 四日目は季節はずれのスクール水着を着て俺の部屋の隅で準備体操をしていた。危うく飛び込まれるところだった。(殺人未遂)俺のベッドは決してプールでもなければウォーターベッドでもない。ちなみにこの馬鹿女が着ていたのはうちの学校で使っているものではなく旧式スクール水着だった。何処で入手したんだよ!
 そして今日は全裸である。ちなみに今は十二月。見ている俺が寒く思えるほどだ。
「おい、江口。お前なんで俺ん家に毎日来てるんだよ」
 体の前後ろを戻し、(いま、アソコ見えた!!)俺を組み伏せるようにしてから彼女は呟いた。
「……君はそんなことも分からないの」
 彼女は何故、というニュアンスをこめて俺に向かって言う。
 よし、ここはいっちょ冷静に突っ込んでやろう。
 この大胆不敵な犯罪者をぎゃふんといわせてやる。


「へぇ、意外と乳でかいじゃん」


 って、違うだろ、俺。
 冷静さを装うコメント失敗。
 生の女の裸なんて今日はじめて見たよ。
 まあ、長い髪の毛で乳首は隠れているのだが。って違うだろ!
 当初の目的の不法侵入睡眠妨害の文句が言えない自分が情けない。
「そうか、制服だとこいつは小さく見えるのか」
 そういいながら自分の片胸をもにゅもにゅと揉んだ。白い乳房はマシュマロのように柔らかに形を変えていく。
 なんちゅーか、無表情でそうやってもいろっぽくないというか、俺の萌え所と違うっちゅーか、なんちゅーか。
 いきなり江口は肩を震わせて、
「へーちょ」
 と呟いた。唐突に何を言い出すか、この馬鹿女は。
「何だ、今の?」
「……俗に言うくしゃみだ。肌寒いからだな。恐らくは風邪の前兆だと思う」
「なら服着ろよ!」
「む、ではその言葉通り、着てやろう」
 くそっ、裸は初めてだがここ数日、毎朝似たような光景ばかり見ている。こいつは男に見られているという羞恥心がないのか。
 二日目は体操服を俺の前で堂々と脱ぎ始め下着姿になりやがった。俺が思わず背を向けたくらいだ。今日も同じようなものなので俺は背を向けた。
 しゅっ、しゅっ、と衣擦れの音がするたびに俺の顔が赤くなってくるのが分かった。
 いまさっきマ○コまで見といてなんで恥ずかしいんだよ、俺。
「………終わったぞ」
 振り返ると着替え終えた江口ミツコが立っていた。
 いたってまともな俺たちの通う高校の制服姿である。いやそれが普通なのだが。
 妹や母親がこいつが裸のとき見に来なくて本当に良かったよ。
「さて、学校に行くぞ。長岡ジョウジ」
 俺の推測だがこいつはサボりがちな俺をどうにかして学校に来させるためにこんなことをしているのだろうか。委員長だからあのヒゲゴジラに怒られるからだとか。
「今日も行くよ、学校に」
「そいつはありがたいな」
 にやりと、江口は笑いやがった。それはけっして美少女のする笑いではない、と突っ込みたかった。

 (2)

「やっぱあれだろ、裏でヒゲゴジラと関係持っていて弱みぃ握られているとか」
 昼休みに友人のタックンとイマイチといつものように屋上で話す。タックンは相変わらず卑猥な話が好きなようだ。もっとも、俺も大好きなのだが。
 十二月なのに空気が冷たくない。暖冬だとか何とか。地球温暖化最高、なんたって夏が長ければ美少女たちは薄着で汗で透けてウハウハってやつだ。もっとも寒さを感じないのは俺たちが単に寒さに耐性があるだけかも知れない。っていうかエロスパワーが在れば寒さなど感じない。エロス万歳。エロスイズマイパワー。春夏秋冬などもはや関係ない。
「蝶ありえねー」
 イマイチがコーヒー牛乳を飲みながら青空を仰いでいた。
「じゃあイマイチはどう思っているんだよ」
「ジョージやタックンにはついてけましぇーん。このエロ神どもめ」
 むっとする。イマイチはこういいながら絶対にむっつりであるというのが俺とタックンの見解なのだ。カマトトぶる高校生男子がいること事体が俺は罪だと思う。男はエロス&ロックンロール。それが俺のジャスティス。つーか人類の半分の超現実!
「そういうイマイチはシチュエーション萌えだとかほざいていたな」
「ああ、間違いなくいっていた」
 俺の言葉に続けてタックンも言った。
「おっぱい好きとスパッツ好きにいわれたくねーよ」
 相変わらず呆れたような顔でいっている。こいつ自分がエロスですと結局認めているじゃないか。
「やっ、シチュエーションは大事ですよ? ほら、なんつーか日常から非日常にあるエロスに変化する瞬間というのが堪らないわけですよ、こう、なっ……」
 そこにエクスタシーを見出したか。だが貴様は俺の過去の轍を踏んでいるに過ぎぬわ。
「エロマ○コ委員長、美人なのに惜っしいよなぁ」
 タックンがぽつりといった。
「確かに惜しい。委員長がもう少し萌えキャラだったら間違いなく俺、告白してるね」
 イマイチも口からストローを外して言った。
「あー例えばツインテールでツンデレだったりしたら萌えるわけか」
「オレは素テレが!」
「俺は小学生なら!」
 俺の言葉に俺以上の駄目返事をしやがった。こいつら……
 素テレってなんだよ、小学生ってマテよ。俺たち高校生だぞ。
 かくいう俺もスパッツ好きだから何もいえないけど。
 ちゅーか脳が膿んでないか。俺もだけど。
「あースパッツ分がたりねーなぁ」
 思わずぼやく。
「……なんだよスパッツ分って」
 イマイチが呆れた顔で言った。
「あれだろ、糖分とかそれ系の栄養分だろ。こいつにとっては」
 タックン、補足サンキュー。でもあとでSATUGAIする。
「「で、今朝はどんなことしてお前を起こしたんだ? エロマ○コ」」
 興味深々な顔で二人は聞いてきた。ええい、同じ台詞をハモリながら吐きおって。
 所詮俺たちは神に選ばれしエロカオス。ファッキンジーザス萌エロリスト。
 そして頭によぎるお○ぱいとマ○コ。一瞬躊躇してから俺は応えた。
「……裸」
「なにぃぃ」
「とうとうそこまで来たかっ!」
「「胸は!?」」
「意外や意外、推測だがD以上は確実だぁっ!」
「なっ、なんだってぇー」
「さては貴様それを一人で堪能したな?」
「ふっ、しかしあいつの仕草には色気がまったくないぞ?」
「それでも!」
「なまおっぱい!」
「「見てぇぇッ!」」
タックン
  _   ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
 ⊂彡
イマイチ
  _   ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
 ⊂彡
俺、長岡ジョージ
  _   ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
 ⊂彡
 俺たちの混声合唱と共に昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「機会があったら写真とっておけ、貴様ァ!」
「いや、むしろ俺たち今晩お前のうちに泊まりてえぇんだよぉ!」
「やめい、不法侵入野郎どもがァ!。貴様ら二人目、三人目になるつもりか」

 がらり、と屋上の扉が開いた音がした。
「五月蝿いぞ、おまえらさっさと教室にいけー」
 貧乳ミニマムティーチャーが俺たちに向かって叫んだ。

 (3)

 目が覚めるといつものように江口ミツコがいるかと思ったがいなかった。
 ぼりぼりと頭を掻く。なんか拍子抜けである。
 途端頭にフラッシュバックする尻・マンコ・おっぱい。
 WXYである。駄目野郎か? 俺。ばきばきに勃ってるよ。
 っていうか最近ずっと家には妹もいるし親もいるし最近は江口までいるからアレ、出来ないし欲求不満か、俺。
 だが朝から抜くのもどうかと思うぜ。マイ・サン。近いうちに吐き出すぜベイベー。オカズとか妄想じゃないぜぇ、はっはっは。はぁ、こう考える時点で溜まってるよ。すぐに飛び出る三擦り半まえだぜ。ちょっと知覚過敏気味。
「おにいちゃん、今日エグチさん来ていないよ」
 朝食をとろうとするなり妹が声をかけてきた。
「あー、そうみてえだな」
「喧嘩でもしたの?」
 ……なんでそうなるんだ?
「おい、ちょっとまて、あいつと俺は―――」
「付き合ってるんじゃないの?」

 ――――ザ・ワールド、時は止まる。

 ナニヲイッテルンダ、コノイモウトハ。

 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ

「誰があんな勘違いザ・21世紀ロボット女と付き合うか!」
「えぇー! 私もお母さんも付き合っていると思っていた。まさか肉○隷だとか」
 ぶっ、と俺の対角上にいた親父が白濁液―――牛乳を噴出した。それをさらりと上半身を背面にねじりながら回避する俺。たまりに溜まった俺にとってその程度の飛沫などスローすぎて欠伸が出るぜ。こちとらアレが有り余ってエネルギーがぎゅんぎゅんみなぎっているんだぜ!
 恐れ多くも我が妹よ、曲りなりにも奇跡的な遺伝子配分で美しく生れたのだから朝っぱらから卑猥な発禁用語を大声で叫ばないでくれ。っというかどこでその言葉を覚えた?
 俺の部屋の秘蔵グッズはベッドの下―――と見せかけておいて使っていないギターケースの中に三重の鍵をかけてばれないようにしているつもりなのだが。夜神月もびっくりする隠し方のはずだ。妹は知らない(はず)
「お前の後者の意見は絶対にない。ちゅーかそんな目で俺を見ていたのか妹よ」
「え? いや、私、変なこと言ったかな? あは、あははははは…… いやでももし本当に奴隷どころか肉便○とかだったりしたら私も貞操の危機が。私、まだ処女なのにぃ。だけど調教されるっていい響きよね、なんだか他者には絶対不可侵の愛というかなんというか、でもおにいちゃんなら(ぽっ)
 なんだか最後はごにょごにょして聞き取れなかったが何故俺を見つめて真っ赤になる、妹よ。
 そもそもこいつは高校受験でこの時期忙しいはずのに何故ここまで余裕綽々なのか。
「おい。ジョージ」
「なんだよ、親父」
「若いうちから盛っているのも結構だが、その、何だ、相手には人権もあるし、妹に手を出すとその、父さんも非常に困るというか、なんというか。そりゃ、父さんも母さんとはハッスルしているさ。だけど妹とは、その、非常に困る。近親相姦はロマンスはあるけど悲劇を持つものだからな。とにかく鑑別署や少年院にお前が行っても、ちゃんと会いに行くから、なっ?」
「何で俺が犯罪起こすのが前提で話しとるんじゃぁー! 馬鹿親父ぃぃ!」
 星一徹が如く俺はテーブルをひっくり返した。

「ったく、なんだよあの家族は」
 思わずぼやいてしまう。
 ふと江口ミツコが来なかったことが気にかかった。
 昨日俺を(多分)起こすために裸になって布団に入っていた。あれが原因で風邪でも引いていたら気分が悪い。それを確かめるように俺は急ぎ足で校舎に向かっていた。
 校舎に着くと何だかざわざわと騒いでいる。
 何事だろうか。玄関がやかましい。
 そこは野次馬根性ヨロシク、俺も興味津々で覘きに行く。
 生徒の集まるなか、ずるずる、と何かが蠢いている。
 なんだ、と思い掻き分けて進む。
「むっ」
 【それ】は何かに反応するように俺のいる方向にずーりずーりと近づいて来る。
 いまの「むっ」って声は聞き覚えが非常にあるのだが、俺の知っているあいつは少なくともこのような非人間的ビジュアルをしていない。
 人間で言う足のところに顔がある。爬虫類系の顔だがどこか愛嬌があって間抜けだ。
 全身のカラーは茶色を基調とした土気色。そして人間の頭に当たるところに緑に光る双眸と長い触手が二本。
 俺はこれをどこかで見たことがある。ああ、どこだっけ、その、すごく小さいころどっかの民放で再放送していた特撮番組のキャラクターだ。
 普段は土中にいて食べると海老のような味がしてグドンとかいう怪獣が捕食する対象の、
「ツインテール?」
 そういう名前の怪獣である。帰ってきたウルトラマンだとか何とか。
「……萌えたか?」
 いつもの台詞。
 怪獣の中からくぐもって聞こえてきた。
「萌えねえよ!」
 心配して損した。なんだよ、このコスプレは!
 ビーっと音を立ててジッパーが(何故か)内側から開いた。中からは汗まみれでTシャツとスパッツを着た江口ミツコが出てきた。
「……やらないか?」
「何をだよ!」
 思わず汗ばんだその姿に釘付けになる。その、なんというか、胸とか太ももとか。スパッツに塗れた太ももと太ももの間のラインとかなんとかぐっしょりしていてはっきりくっきりですよ。むっちりむっちりとラインがあらわになっていて普通の服というか、裸以上に厭らしいというか、その、ああ、動くな、如実にゆれるおっぱいの動きが隠されることもなく見えて、その居乳の先端にに見えるツンとしたのは噂に聞く乳首だとか、ああ、もう、なんで欲求不満な俺の前にスパッツで現れるのか。スパッツ分が不足している俺にとっては禁煙中の人間にとっての上手い煙草に匹敵するようなものである。むしろ麻薬。ちゅーか脳内の麻薬。っちゅーか黒いスパッツ濡れ濡れでエロイ、エロイよ、エロマ○コイインチョウ!
「……寒い」
「当たり前だ!」
「へーちょ」
 何だって俺はこの女に振り回されなければならないのだろうか。
 どっちにしろこれで風邪を引かれたらなおさら性質が悪い。俺の気分は最悪になる。しかたなく上着をかける。
「なんだってツインテールの気ぐるみなんか着ていたんだよ」
「君が昨日、ツインテールが好きだと言っていたから」
 俺は神に誓ってもウルトラ怪獣が好きだなんて生まれてこのかた言った覚えがない。
 むしろ俺が好きなのはライダーなのだ。タイガーロイド最高。
 とどめに俺は仏教徒なんで神なんて信じてねーのですが。
「おまえは凄まじく勘違いしていると思うぞ。俺は」
「むう」
 着ぐるみを抱きかかえながら彼女は呟いた。

 (4)

 俺こと、長岡ジョージは毎朝目の前に、例え無表情で愛嬌がなくて機械みたいな人格をしているナイスバディな女がいて、なおかつ性欲がマックスに溜まっていても襲わない理由がある。
 そう、俺は恋をしているのだ。
 それもとても可愛らしい女の子。
 誰かに似ている気がするがそれが誰か思い出せない。そんなデジャブにも似た印象を抱かせた彼女との出会いは痴漢から助けるというどっかの漫画に出てきそうな切欠だった。
 ああ、あのスパッツを履いたどこかおどおどした健康的な少女のことが忘れられない。
 細い手足に中性的で整った顔立ち、スレンダーな体つき(貧乳だがそこもまたグッジョブ)ハスキーボイスに大きく潤んだ瞳。何をとっても百点満点な彼女の名前は「カオル」というらしい。
 俺は彼女を思うたびになんちゅーか、こう、わけのわからん女子のエロ姿を見ても欲情せずにすんだ。ギリギリだけど、多分。
 一週間前に出会ったばかりだが今日は彼女が俺にお礼を言いたいらしく約束を取り付けてきた。やったぜ。俺はこの一週間を待っていた。だからあの女の変な行動にも耐えられた。
 うずうずする。ああ、もう楽しみだ。待ち合わせの時間に早くならないか、うきうきしぱなっしだ。
「馬鹿が馬鹿な顔して妄想してるぜ、イマイチ」
「あー、ほら頭に春が来たとか毒電波まきちらされたとかそのあたりで勘弁してやれよ、タックン」
 二人が話すことは上の空。ふふふ、所詮貴様らは彼女いない暦イコール年齢さん、だろうが今日からの俺は違う。むしろ今日からメイドインヘブン。人生勝ち組だよ。たとえ彼女が出来たとしてもカオルを超えるものがそうそういるものかっ、はーはっはっは。
 最初に手をつないで次にキスしてその次でベッドイーンッ! そして行く先はハネムーン&永久のラブ。
 頭の中では初デートから結婚、初夜、子供出産、娘の嫁入り、歳をとってからの嫁のカオルとの第二の青春まで描かれ、最後は二人でお墓にGOだぜ!
「イケテル、俺いま世界で一番イケテルゼ! アーハッハッハッハッハ」
 俺最高、俺天国、俺極楽。
「壊れてる、壊れているよ、イマイチ」
「大丈夫、大方脳内彼女でも出来たんだろう、スパッツの」
 雑音がするから振り返るといつもの屋上にタックンとイマイチがいた。
「よぉ、いたのか、イマイチ、タックン」
「最初からいたぞ」
「同じく、つーかスパッツっていう単語に反応しただけだろう」
「お前らが、ほら、あれだろ、雑魚い緑のザクとかだとするじゃん。俺って三倍? むしろシャア?」
「何言ってんだ、お前ガノタ?」
「ほっとけよ、タックン」
「むしろ俺ガンダム? つまり俺ダム? ストライクでフリーダムな感じでなおかつ伊達じゃないνでマークなUでZZなヘビーフルアーマーっちゅーわけよ。お前ら人生負け組みとは違うんだ。あーはっはっはっは。真っ赤に塗って角とかつけるぜ。ガンダムに」
「ガンダムにゃ最初から角あるだろ。ないのは髭だけだよ」
「赤いガンダムはレッドウォーリアで十分だよ」
 そう、口が裂けてもこいつらには言わない。あっはっは。江口ミツコなんて糞くらえだ、あんにゃろ、今日も起こしにきたようだがそれより先に俺は起きたし、誰よりも先に学校に来たんだぜぇ、あっはっは。学校の屋上で朝焼けを拝んだぜ!
「あーはっはっはっはっはっ……」
「あ、倒れた」
 イマイチの声だけが聞こえた。

 (5)

 待ち合わせに遅刻した。
 原因は睡眠不足。ああ、くそなんだって俺は学校で寝てしまったのか。
 もう夕方で帰宅ラッシュ。俺は駅前の広場でぽつんと座っている。
 うう。待ち合わせにもう一時間は過ぎている。人生の一大転機だったはずなのに俺の睡眠不足でもはやそれも過ぎそうだ。
 辺りを見回す。俺と同じく学生服の男女がちらほらと見える。
 彼女、カオルは何処にいるのだろう。
 ちゅーか遅刻した俺に呆れて来ていないのかもしれない。
 目の前には先ほどからうろうろしている男子学生が一人。
 俺とは違う高校の生徒だ。たしか横の公立の制服だったか。
 そいつと目が合った。
「あー、来てたんですね」
 ハスキーボイスでその少年は言った。
 俺は後ろを振り返る。誰もいない。
「え?」
 改めて正面を見る。どうやら俺にたいして言ったらしい。
「探しましたよ、ジョージさん」
 えーと、もの凄く見覚えのある少女が学ラン着ている。
 その顔は間違いなく、あのカオルちゃんだった。尻のラインが一緒だからな。
「えーっと、カオルちゃんだよね」
「はいっ、江口カオルです。本当にこの前は助かりました。姉も礼をいいたいそうで」
 もの凄く明るい声と笑顔でカオルは答えた。その笑顔が凄く奇麗で可愛くて魅力的―――だ。だけど、あれ? 学ラン? 江口?
 なんだか頭がぐるぐるしてきた。
 ひょっとして男の子だったり。
 ん、まて、姉? この前助けたのは実はそっくりな姉だったとか言うオチだったら最高だよな。
「こちらが僕のお姉さんです」
「ん、ジョージか。奇遇だな。私の【弟】を助けてくれてありがとう」
 見覚えのあるクラスメートが冷静に声をかけてきた。
 ……………はっ、一瞬気を失いそうになった。
 えーと、マテ、落ち着け。状況を整理しろ。
「カオルは、えっと、そのエロマ……っじゃない。江口ミツコとえーとその、血縁関係?」
「はい、そうです、双子ですよー」
 明るい笑顔でカオルは答えた。
「君は、その、男の子?」
「ええ、そうですけど?」
 柔らかな可愛い表情でカオルは応えた。
その無邪気な表情で見つめられると余計混乱する。
 からからと、俺の心の奥の何かが壊れていく気がした。
「つまり、その、なんちゅーか」
「ありがとうございます。これ、ほんのお礼ですけど……」
 そういって彼は紙袋を手渡してくれた。
 何か品物が入っているんだろう。
「あは、あは、あは、あは、あは、あははははははは」
 俺の乾いた笑い声が他人事のように思えた。

 なんだか、何もかも馬鹿らしくなった、俺のこの一週間、目の前の良い女がいたのに諦め続け、挙句の果て、待ちに待った美少女は美少年だった。
 終わった――――俺の人生。
 俺の初恋は、男の子でした。
 結婚できないよ、ママン。

 (7)

 うう、もう目覚めたくない。
 そう思いながら俺は目を覚ます。
 生きてるっつーのは目を覚ましているときだ。
 だから逆に寝ているのは死んでるっつーことだろう。
 で、俺は死んでいたい心境だったわけだ。俺の勘違いで。
 目の前でエグチミツコが下着姿になっている。いつものように着替え中だ。
 手にはスパッツを持っている。脱いだのかこれから履くのか判断がつかない。
「よう」
 無表情にくるり、と彼女はスパッツだけの姿で振り返る。
「おはよう、もう目が覚めたのか」
「ああ」
 ついでに覚めたくもない夢から覚めた気がする。むしろ冷めた。
 俺はここではじめてこいつに聞く事があった。
「おまえさ、なんでいつも俺のこと起こしに来るわけ?」
 江口ミツコはきょとんとした顔をした。こんな顔をした彼女は初めて見た。
 いつもと違う顔の彼女の顔はカオルに似ていた。ああ、つまり表情が違うから同じ顔ということに気付かなかったわけだ。っちゅーことはこいつって俺の好みにストライクなわけだな、性格以外。
 彼女はすたすたとスパッツだけの姿で俺に近づいてきた。ぎしぎしとベッドのスプリングが鳴る。
 彼女は俺の上にまたがるようにして顔を近づけて言った。


「君のことが好きだからだ」


 は? なんていった、この女。
「だから私は君を愛するために、毎朝こういう行動をしているわけなのだが」
 顔を赤らめることもなく彼女は淡々と応える。
 なんちゅー分かり難い。ちゅーか分からなかった。
 よく考えろ、整理しろ。
 つまりこいつは恋愛の
 「1:手をつなぐ」
 「2:キスをする」
 「3:寝る」
 という順序を逆にしていたということだ。
 なんだかスゲー拍子抜けした。
 つまり、モテない人生を歩んでいた俺は一週間前からアプローチされていたわけだ。凄く変な形でだけど。
「馬鹿だろ、おまえ」
 思わず俺は口を出してしまった。
「そういわれるのは、初めてだな」
 珍しいことなのか、彼女はくすり、と笑った。
 その顔は今まで見たこともない彼女の顔で、その、なんというか、凄く可愛い。
「少なくとも私は君より学校の成績は抜群にいいとおもうのだが」
 この女の言うとおりこいつは全国トップレベルの点数だ。だけど、
「常識というか、恋愛のルールが欠けてるんだよ、お前は」
「ルールとか、常識とかどうでもいい。私はお前が欲しいだけだ」
 俺は迷わず彼女の唇を奪った。
 彼女はぎょっとした顔をした。
「何を―――」
「せめて、ここからはじめようぜ」
 スパッツだけ履いた彼女と俺は見つめあっていた。

 ギィッ、バッタン

 振り返る。
 扉が開いて閉じた。
 嫌な汗が背中を流れた。
 そして、ばたばたという音が響いて玄関の扉が開いた音が聞こえた。
 部屋の窓から一階の玄関を見る。
 母と父と妹が荷物を持って家を出ていた。
 俺に向かって全員が親指立てた。即座に車で爆走していった。
「なんつー、家族だ」
 まあ、いいや。
 これで心置きなく童貞を捨てられ―――じゃねえよ!
 なんだよ、うちの家族は。一番壊れてるのはあの連中じゃねえか!
「いきなり接吻とは何事か」
 彼女はいつもどおり冷静に言った。
「馬鹿野郎。お前、いつも俺を誘っておいてその反応はないだろ」
 むう、っと相変わらずの声を吐き出す。
 ちなみに、俺なんかは一週間以上出していないからもう、バッキバキに固まっている。いや、アレがな。
「どうやら、君は戦闘態勢抜群のようだな」
 俺のあれをするり、と細くて柔らかな指で撫で上げた。
「うっ」
 思わずうめき声を上げる。背中からゾクゾクとしてきて、キモチイイ。
「マテ、待て待て待て」
 出る、出る。アレ出る。ヤバイヤバイ。
 早漏とかへたれとかいうな、一週間以上抜かずだったらこうなるってばよ!
「なんだ、何を待つのだ?」
 くりくりと目まぐるしく黒い瞳を俺の股間と顔の間で動かしている。

「私は、君と性交渉がしたいのだが」

 普通、そういわれる男はいないと思う。
 ほんのりと頬を赤らめて彼女は呟いた。
 小動物みたいですこし可愛いかも。あ、やば。
「いいか、江口ミツコ。お前はこれが凄く大切なことって分かっているのか」
「生殖行為がか?」
 そうだ、忘れていた、こいつはこういう女だった。
「えーっと、な。俺は生殖行為が大好きというか興味津々だけどきみがどうしてそうなったのか凄く聞きたい。理解したいんだよ」
 むう、と唸ってから彼女は首をかしげ、話し始めた。
「えっと、私はどうやらきみとの間の子供を作りたいようだ。その、ずっと君が気になっていて、どう接すればいいのか分からなくてこの感情が何なのか分からなかった。弟に聞いたら、好きか嫌いか、のどちらかだ、といっていた」
 なるほど。ほかの選択肢はないわけかよ……
 っちゅーかその台詞を羞恥心なしに顔を赤くすることもなく淡々と喋る君は何者だ。
「ためしに想像の世界で君を殺してみた。そしたら親や弟を想像で殺したときより胸が痛くなった。だから私は君のことを好きなんだと思う。世界中の誰を想像で殺しても君ほど心が痛まなかったんだ」
 それは、なんてとんでもない告白だ。
「オーケイ、分かった。俺はこの行為を初めてする」
 ぶっちゃけ童貞である。早漏である。皮被りである。横曲がりである。自分で言っていて悲しくなってきた。だが、サイズはでかい。これは学年でトップだ。間違いない。
 修学旅行ナニサイズトトカルチョ優勝者だぜ、この俺はよぉ! 童貞だが!
「お前はどうなんだ」
「私のここは生殖に関しては未使用だ」
 そういいながら自分の股間の上に手をかぶせた。
 つまり、処女っつーワケだがこの言い方だと余りうれしくないのは何故だ。
「お互い素人というわけだがその、しょっぱなからこのような行為をする前に俺、お前のことをもっと知りたいんだ。それからでもいいんじゃないか」
 彼女は首をかしげ、何か考えた後、
「ああ、いいな、それも。私はそちらのほうが好みかもしれない」
 俺たちはそこで初めて手を繋いだ。
「じゃっ、学校行こうぜ。毎朝これから一緒によ。生殖行為するのはもう少し俺もお前も成長してからのほうがいいと思うぜ」
「むう、私は子供を生むことは出来るのだが」
 臍の下辺り、スパッツの黒い生地の上を撫でながら言った。
「お前はまだ子供を育てる前に覚えなきゃいけないことがたくさんある。そうだな、せめて羞恥心くらい覚えてくれ」
「羞恥心、か。心なんて人間にはないのだが」
「はーいはい、そこで理系的に考えるな。もう少し文系で行こうぜ」
 俺の答えににんまりと彼女は笑う。それはいつもより心を開いたような顔だ。
 それは、今まで見た顔の中で一番落ち着いた、綺麗な笑顔。
「だから、私は君に惚れたのだ」
 そっと彼女から唇を俺に近づけて、やわらかくキスをした。
「私に、心を教えてくれ、ジョージ」
「おう、任せとけ」
 今度は俺からキスをした。



 エピローグ

「で、おめーいまだに童貞なわけだ」
 げひゃひゃひゃひゃと、タックンとイマイチが笑いながら俺に言った。
「五月蝿い。オメーらも童貞だろうが」
 俺は確かに童貞だが、しかし―――
「おめーらはどうなんだよ」
「ジョージ、そいつは秘密ってやつさー」
 イマイチが答える。こいつはいまいちつかみどころが分からない。
「まー俺はその、まあ、なんだ。くう」
 タックンの歯切れが悪い。
 こいつには幼馴染で同名のクラス名物究極どじっこ女がいるが、……まさか?
「まあ、そこらへんはつっこまねーよ、タックン」
 イマイチがにやにやしている。……なるほど。
「うるせーよ」
 タックンは不貞腐れている。まあ詳しくは聞くまい。
「何はともあれ、スパッツの未来に栄光あれ」
 俺は冬の校舎の屋上で宣言した。








 回転式世界閑話1

キャラクター紹介
長岡ジョージ
ジョルジュ長岡、及び製作者との関係は一切なし。
鈍感、主人公気質、エレキギターを持つロックンローラー。
次回作があるならきっと異能力ゲットしてバトル物。そして死亡。

江口ミツコ
過去と現在のトラブルにより真っ当な人間行動が出来ない美少女。
痛いと真面目の紙一重。肉欲と愛情の区別がつかない。次回作にてバトル主人公。

江口カオル
主人公にトラウマを与えたスパッツ美少年。
ずれた双子の姉を強制するために日々努力を怠らないがどこか間違った知識を教えるため、姉もずれていく。次回作にてボスキャラ。

イマイチ&タックン
主人公のクラスメート。それ以上でもそれ以下でもない。
このサイトの関係者とは関係がありません。ある意味、影の主人公。

長岡(妹)
兄を慕う余り暴走し、妄想のみが腐女子気質。彼女の暴走は口で発露するも現実では無効。

長岡(父)
正常な振りして中身は所詮主人公の父。
かつては主人公と同質の才覚を持っていたためかいまでも妄想は健在。

未搭乗キャラ
スパッツ師匠
そのビジュアルはヘル○ングの小太りチビオタクと同じビジュアルを持つ。
主人公たちのエロス師匠。どう見ても年上だがクラスメート。
口癖は「私はスパッツが好きだ(略」


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