7/とある日曜日の日常

 日曜と言えば、のんびり昼まで睡眠を貪るというのが正しい男子学生(体育会系除く)のスタイルだと断言してもいいと思っている俺だが、残念ながらそのスタイルはなかなか現実のものとなってくれないのが現状である。
「起きて〜、起きてよ〜」
 軽い揺れと共に、どこか遠くから誰かが呼ぶ声が聞こえる。
 ゆさゆさ、ゆさゆさ…細かい揺れが続き、さらに眠気を誘う。
「う〜ん…Zzzz…」
「早く起きてよ〜待ち合わせに遅刻しちゃうよ〜」
 さらに揺れが続く…わが眠りを妨げるものはゆるさんぞ…
 完全に寝ぼけている俺は、手探りで身体を揺らす誰かの手を掴み、
「あぅっ」
 布団の中に引き釣りこんだ。

 …温かい…
 徐々に覚醒し始めた俺は、何か妙に温かいものに包まれているような感触を覚えた。
 微妙に息苦しい…窒息はしないが、いつもより呼吸がしづらい。
 おまけに、呼吸をする度に何か甘い匂いがする。
 …ん? 何か右手が柔らかいものを掴んでいる。
 試しに指を動かしてみると、何か近くで悲鳴というか嬌声が聞こえ…

「あらあら、ショーちゃんと卓美、そんなに進んでいたのね〜」
「たぶんうちの馬鹿息子が卓美ちゃんを寝ぼけて布団に引き摺りこんだんだろね」
「じゃ、今晩はお赤飯ね♪」
「今のうちに一枚写真でも撮っておくか」

 …ちょっと待て、何か今非常にマズイ状況だと直感が告げている。
「ショ、ショーちゃん…」
 卓美の声が間近で聞こえる。そういえば、今日は卓美の買い物に付き合う約束があったな、と思い出す。
 勇気を出して目を開けてみると…

 身体を密着させた状態で、顔を真っ赤にしている卓美と、布団の脇で携帯電話を片手にしている母親とにこやかな笑顔を見せる卓美の母親であるおばs「亜歌莉さんよ♪」…イエスマム、亜歌莉さんがいらっしゃった。
 俺は左腕を卓美の腰に回し、右手を胸部に添えた状態で、卓美を抱き枕に就寝していたらしい。

「…オハヨウゴザイマス、お母様方と卓美様」
「おはよう馬鹿息子。いい加減、あんた専用の抱き枕を放してやったら? それとも、あんたが本棚の辞書の空き箱の中に隠しているゲームのように今からお楽しみをするのかい?」
 おい、母親。何で貴様が知っている。
「母をなめるな」
 今度から隠し場所を変えよう、今心に決めた。
 とにかく、今はこの状況をどうやって切り抜けよう…
「しょーちゃん…」
 …なんでございましょうか、卓美様。
「まだ朝だし、明日は学校なんだから、こういうのは休みの前の夜にした方がいいと思うよ…でもでも、しょーちゃんは金曜の晩は遅いし、それなら土曜の夜に」
「だぁー! 何を言い出しますかこの天然娘はー!!」
 自分で言うのもなんだが、えっちな事はいけないと思いますよ!?


 その日の夕食が赤飯と鯛の尾頭付きだったのは俺に対する嫌がらせか母親ども。
 あと、天然の炭素同素体を欲しがるんじゃありません、大人しく今日プレゼントしたジルコニアで勘弁してくれ卓美さん。それ、高いんだからマジで。


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