3/とある水曜日の部活風景

 学生生活の華と言えば、「部活」であると俺は思う。
 大会や発表会など目標に向かって頑張るといういことはそう体験できない貴重な思い出となって自身の人生に彩りを与えていくことになるだろう。
 そんな貴重な思い出を築く部活とは正反対の部活が本校には様々あるが、そのうちの一つ。
 俺が所属する「近代人類文明研究会」、通称「ヲタ研」である。

「ふと思うんだが、お前らが3次元にどんな点で魅力を感じているんだ?」
 部室に入って漫画を読んでいる最中、いきなり部長であるジョージこと長岡丈治が尋ねてくる。
 俺とイマイチこと今井智は手に取っていた漫画から目を離し、ジョージに疑惑の眼差しを向ける。
「イマイチ…とうとうジョージが壊れたな。リアルに興味を持つなんて」
「タックン…とうとう壊れたね、ジョージ。PCの向こう側が俺の世界と言っていたのに」
 それぞれ同義の言葉をジョージにかける。何気に酷い言葉が混じっているが、そんなことは気にしたら負けである。
「おまえらひどいな…まぁ、華麗にスルーするけど。ぴっちりしたスパッツ、とか」
 そう言いつつ、息を荒げ彼方の方角を見始めるジョージ。はっきり言って…外でやったら通報されるぞ。
「あ、その意見は俺も賛成」
 ジョージの意見にイマイチも賛同の手を挙げる。さすがにジョージを視界から追い出そうと必死になって顔を逸らして視界に入らないようにする努力はしているみたいだ。
 でも、同じように鼻息荒くしている時点で同属扱い決定。
 まぁ、俺もその意見は否定はしない。
 なんだかんだ言いつつ、俺ら3人は同属、同じ穴のムジナでしかないのだ。
「お前等ねぇ…3次元の特徴といったら、揺れる乳だろうが」
 ここであえて異なる意見をぶつける俺。
 するとジョージもイマイチも肩をすくめ、ため息とともに「やれやれ」といったジェスチャーをする。
「やれやれ、これだからおっぱい至上主義者はいかんね(…委員長に手を出したらコロス)」
「タックンはアレだもんなー、仕方ないよジョージ」
「おお、そうか、そういやアレだったよな、今井氏」
「そうだね長岡氏」
 2人して俺の方を見つめニヤニヤと気持ち悪い笑いを向ける。
「マテマテ、お前等何を勘違いしている。ただ単に一番目につくところを挙げただけにすぎないんだ。もちろんスパッツも好きだが、どちらかというと俺はスパッツよりブルマ、ショートパンツの方が個人的には魅力を感じる所存であります。そこのところを間違えるなよ?」
 思わず後半が敬語になっているが、俺の思いの丈を2人に対してぶつける。
 2人は俺の顔を見つめ、同時にため息をつく。やれやれ、この坊やは…というような声まで聞こえてきそうなほどの見事なため息である。
「あれだろ、タックンて鈍感とかニブチンとか言われているだろ」
「あと、地雷を踏みやすいタイプの策士。咄嗟に弱いチキンだね」
 うんうんと頷く2人。
「…表に出やがれ…ちくしょう…」
 俺には精一杯の強がりしか出来なかった。
 チキンとかヘタレとか言うな。

「じゃあな、タックン」
 そう言ってジョージは一足先に部室を出る。何でも、委員長と帰りの約束をしているらしく「遅れると、あの手この手でオレに対するイメージの低下を図ってくる」らしい。
 どんな事をするのかすごく知りたいけど、ジョージの青ざめた顔を見てやめておく。あと、元々ジョージのイメージは高くないんだから、とツッコむのもやめておく。
 そこらへんの優しさは一応俺も持っているから。
 俺が同じ状況になったときに報復されるのが怖いからとかそんな理由じゃないよ?ほんとだよ?
 「あ、俺もそろそろ帰るわ。図書室に寄りたいし」
 「了解、和見ちゃんによろしく」
 イマイチが照れながら部屋を出て行く。最近、やつは図書委員の和見一子というミニマム少女にお熱である。
 理由をつけて図書室に通うやつを俺とジョージで生暖かい視線で応援するのが最近の楽しみである。
 俺も帰ろうと荷物を整理していると、部屋をノックする音。
 扉を開けると、そこには卓美が立っていた。
「ショーちゃん、帰ろ?」

 校門で長岡・委員長のエロコンビと今井・和見ちゃんの凸凹コンビが騒動を起こしていたが、今回の話とは関係ないので明記は避けておく。
 ただ、一言。お前等、世間の目を気にしろ。


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