走る

走る、ただひたすらに走る。
灼熱の太陽と炎天下の空気を全身に浴び、汗が滝のように流れ落ちるのも構わず、彼はただ走っている。
懐には一つの書状。
彼の生まれた国の王へ、彼が所属している部隊の勝利を報告する書状を届けるためである。
戦況はほぼ互角。この書状が届くか否かで、この戦争に勝てるか負けるかが決まる。
その重要な任を部隊長から彼は任された。
既に息は乱れ、肩で呼吸している状態である。
身体には戦場で受けた傷からは絶えず血が流れている。
それでも、彼は走り続けた。
彼の想いは唯一つ、この戦いに勝つこと唯それだけであった…


「…という話から、マラソンという競技が生まれたんだよ」
「ふ〜ん…」
「だから、彼の遺志を無駄にしないためにもマラソン大会には参加しような」
「寒いからやだ」

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